国民の食意識


桃鍋キャスター:こんにちは、鍋底ニュースのお時間です。

桃鍋キャスター:先週お知らせした人の形質問題の続報になります。鍋食研究機関「ナベ研」の研究発表を受けた鍋の国政庁は、人の形質問題と食材の関連性については国民への知識共有化と合わせて子供の頃からの学習が必要であると考え、小・中学校において食育科目が履修必須科目として導入される事が決定しました。これにあわせて食育を充実した教科用図書が指定されました。

また政府の活動を受けて、各放送局ではカテゴリーブックにおいて指定されている食材を使った料理番組や、政府安全保証食品のみを使った料理を紹介する番組など、いくつかの新規番組が放送されるようになりました。

鍋の国料理人気番組「鍋国ニコニコ気分デリシャス」では新コーナーとしてご近所料理企画と銘打って、スーパーへロケを敢行。どの食材を買おうか迷っている主婦に突撃インタビューを行い、プロのコックが食材の選び方やカテゴリーブックの上手な使い方を伝授した上でご家庭にお邪魔して美味しい家庭料理のレシピを公開するといった新企画などの新たな試みが行われていたりします。

また、出版業界においてもカテゴリーを区別した料理本が次々と販売されました。人気の料理本としてはまな板出版から発売されている安心安全レシピ集があります。先日は煮物編が発売されましたが、当日の駅前書店「MEGANE BOOK」では開店直後からレシピを買い求めるお客でにぎわいました。
安心安全レシピ集シリーズは政府発行のカテゴリーブックで政府安全保証食品に指定されている食材をメインとしたレシピ集です。煮物といえば、鍋料理はもちろんですが、肉じゃが、シチュー、カレー、おでんなどをピックアップ。鍋の国で一般的に料理に入れている食材をリストアップ。安心して使えるものかどうかを調べる早見表を掲載しています。また安全カテゴリーに入らない食品、調味料の代替品として使える食料、調味料もピックアップ。もちろんレシピ集なので安全食品のみで作る煮物レシピも掲載しています。
監修は鍋の食材研究家の鍋田空さんが関わっており、本人は「煮物料理といえば、鍋の国の家庭料理。今回のレシピ集は煮物に使う事の多い食材を集めました。特定の食材を調べる時はカテゴリーブック、レシピとして使う場合は安心安全レシピ集をお使いください」とコメントをしています。

では、次のニュースです。




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「ママァー」

「どうかしたの?」


 私がニュースから目を離すと小学校の制服を脱いだ小梅がこっちに駆けてきた。よいしょっとばかりにテーブルの横に座る。ちんまいさが愛おしい。

「うん。あのね、明日のお弁当にコレ入れて欲しいの」

 小梅が指さしたのは丁度ニュースでもやっていた安心安全レシピ集煮物編。開いているページに載っているレシピは梅つくねである。
この子の名前に梅が付くとはいえ、ここまで梅好きなのは感心する所なのか、ちょっと子供なのに渋くない? というか、赤ん坊の時にちょくちょく天神様にお参りした帰りの梅の道が影響したのだろうか? あそこは夫との思い出の場所なのでこの子も好きになってくれるのは嬉しいのだけれど……。

「ママ?」

「あ、ごめんなさい。えーっとお弁当には梅干、梅玉子焼きをいつも入れているのに?」

 小梅はうーと唸った後、答えた。その反応はちょっとかわいいぞ。

「じゃあ、明日のは普通の玉子焼きでいいから」

 玉子焼きも欠かせないのねっと思いつつもレシピを見る。うん。これなら冷蔵庫の中身で作れる。

「あ、あとね、お野菜も入れてね。バランスが大事なんだよ」

 小梅はそう言うと片手に持っているレシピ集をえっへんと見せる。もちろん、以前に買った本なので覚えている。というかせがまれて読む事になった。主に梅干料理のところを……。あの本は栄養バランスが大事と所々に書いてあったので覚えたのだろう。そういえば、スーパーで野菜を買う時も必ず安全表示マークを確認していたりと実践している。我が娘ながらも食の安全、健康面に意欲的なのは感心する所である。



「お野菜かぁ、小梅ちゃんは何がいい?」

「キュウリー!」

 考えるまでもなく飛び出た野菜はもちろんのキュウリであった。梅と一緒に食べると美味しいと……この子は大人になったら酒飲みになりそうね。

「じゃあ、味見がてらに今日の晩ご飯に梅つくね、作って見ようか?」

「うん!」

 はい、良いお返事です。


絵:サク



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「ママー、いいにおいがするよー」

「そうねぇ、あと、もうちょっとかかるから味見はもう少し待ってね」

 お鍋の中をお玉で様子見。普段ならちょっと味見している所だけど、子供の前である。ちゃんと出来上がってからにしよう。まぁレシピ片手に作っている事もあるし、そうそう失敗はしないだろう。なんだったら出来上がり直前で味見をして見てもいいのだ。

「小梅ちゃん、小皿取ってもらえる?」

「はーい」

 小梅の持ってきた小皿に梅つくねを一つ取り出し、箸で二つに分ける。そして片割れを口に中に入れると中身はジューシー。アツアツではあるが梅と鳥のハーモニーはなかなか美味しい。

「あー、ずるい! ちょーだい!」


 叫ぶ小梅の口にも梅つくねを持っていくと急に笑顔になってニコニコモグモグ。ほんと、この子は梅味の食べ物には目がない。けれど取り過ぎないように梅料理の品数を調整したり、野菜を取ったりと偏った摂り方でなく栄養バランスも考えて食べてくれるので安心。  
そもそも、安心安全レシピ集を買うようになったのは学校からの食育参考図書のお知らせを見て小梅が欲しいと言ったのが始まりであった。まぁ、その動機としては第一弾に天神様にちなんだ梅料理特集があったからではあるが……最近では他の料理にも興味が出ているようだ。


「どう?」
「うん。おいしー。小梅ちゃんレシピにでんどういりだね」


 この子は気に入ったレシピを自分のレシピノートに書いており、大事に保管している。将来の事を考えるとこの子もお嫁さんになって子供に自分の料理を伝えていくのであろう。この子の好きな梅料理や私が好きな料理だけでなく、栄養バランスとかをしっかりと考えて多様なレシピを伝えることができれば……と思う。うん、今までレパトリーにしてなかった料理とかも挑戦していって一緒にレシピ増やしていければいいな。

「ただいまー」


「あ、パパおかえりー」


 どうやら夫が帰ってきたようだ。小梅がお出迎えしているこの間に仕上げてしまおう。
もちろん最後の仕上げは、料理にたっぷりの愛情を注ぐこと。
子供と夫の身体の安全と健康を守るのは、ママである私の大切なお仕事なのだから。




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