ターン18シーズンインを前に、NWは深く傷ついていた。
A世界との融合を断念したB世界による攻撃は激しさを増し、水の塔の破壊により、ついにはNWとA世界の接続を絶つに至る。
なす術もなく、A世界のフィクションノーツたちは、NWに介入するすべを失った。

かくして、B世界の猛攻が始まる。

もはや無用と断じたNWを滅ぼすべく振るわれるB世界の刃は、NWを深く傷つけた。
NWは傷つき、もがき苦しんでいる。
だがしかし、だとしても……それは何時ものことだ。
NWは何時だって傷つき、血を流し、苦しみにのたうちながら、前に進んできた。理不尽を潰し、不合理を乗り越えてきた。
流した血で傷ふさぎ、痛みを力に、涙を糧として、一つずつ歩みを刻んできた。
故に、NWは自らの傷を癒すために戦いを始める。何時もの通りに。何時ものように。

まず、NWのAIたちが動き始めた。
NWにフィクションノートが降り立ってから、すでに年単位の年月が過ぎ、その間の行動パターンの蓄積によって、AIたちの挙動は、モデルとなったフィクションノーツたちのそれとほぼ同期するまでになっている。
B世界の攻撃によるNWの滅亡を座して待つには、AIたちはあまりにもNWの全てを愛していた。モデルとなったフィクションノーツたちと、同じように。
そして、彼らはB世界の攻撃を凌ぐ一方で、その攻撃を根本的に排除するための手段として、水の塔の再建による世界観接続の復活を選択した。
それはA世界との接続を復活させるという選択。
まだ見ぬ希望に、今ある世界の明日を委ねるという願い。

水の塔の破壊は、NWにとって大きな損失ではあったものの、一方で、メリットもあった。
その一つが、B世界による通信傍受の心配がなくなったこと。
B世界は水の塔を用いて、NWとA世界の通信を傍受することで、情報戦において圧倒的な優位に立っていた。
水の塔の破壊は、その優位を自ら放棄したに等しい。
AIたちは、そこに付け込んだ。
情報戦にありったけのリソースをつぎ込み、帝國と共和国の違いを乗り越え、水の塔再建に向けて協力体制を築き上げた。AI達は囮の塔の準備を始め、予測される攻撃への対応部隊を編成した。

全ては、愛するNWを守るために。

……そして続々と戦力が集まりつつあるなか、遠く、夜の星の下でなお輝くFEGでも、水の塔を復活させるべく動き始める。
世界を癒す戦いが、深く静かに、今、始まる。




塔とは、昇る者を天上へと誘う梯子であり、異界への架け橋である。
従って、人が登るための機構を持たない構造物は塔ではなく、人が登ること自体を目的としない構造物も、塔とは呼ばない。
水の塔もまた、同様である。

●後ほねっこ男爵領郊外

何処までも白い景色の中、洒落たベレー帽を斜めに被った白い髭の老人が一人、朗々した声で歌っている。
吹雪でなければ猛吹雪と言われる、後ほねっこ男爵領の冬には珍しい曇天。
それでも吹きつける風は、嵐と見まごうほどに激しい。
だが、轟々たる風に乗せて、歌声は何処までも広がっていく。
何時しか、その歌に宥められるように風が止んだ。
やがて、重く垂れ込める雲が、ゆっくりと動き始める。
雲の隙間から黄金色の陽光が、天上へと誘う階のごとく老人に向かって静々と降りていく。

●ゴロネコ藩国遺跡

ゴロネコ藩国の南方に位置する古代遺跡。海に向けて開けた台、かつて、そこで彼らは星を詠み、大いなる徴を見定めたという。
今、そこに集うのは、白い服に身を包み、輝く手を持つ耳長き人々。ゴロネコ藩国の白魔法使い。
円陣を組み、声高らかに詠唱するのは、世界を律する規律それ自体。
彼らの力は、ある意味では、ほんのささやかな力だ。
流れを、正す、ただそれだけの力。
正しい流れには、何一つ干渉することの出来ない力。
しかし、それは、誤った流れを、正しい流れに引き戻す力でもある。
故に、世の因果が正しくない方向に流れるとき、彼らは絶大な力を発揮する。
詠唱の声の高まりとともに、海鳥の群れが、風の階段を駆け上がるように天上へと舞い上がっていく。

●FEG

ここはFEG。都市化の進まぬ砂漠の片隅。立ち並ぶ塔は、死者を悼み祈る手にも見える。
そこにまぎれるように、一つの塔が今まさに屹立する。
他を圧する偉容を誇るでも、天を衝く高さを誇るでもなく、その塔はただ静かにそこに存在している。
しかし、その塔こそ、生と死を繋ぐ階、生と死が変転する台。
これこそが水の塔。世界を見下ろす、天上へと至る梯子。
運命を司る世界樹イグドラシル、遥か未来を目指し、無限遠にまで広がるその枝葉を育むもの。
後ほねっこ男爵領の賢者の高吟も、ゴロネコ藩国の白魔法使いの詠唱も、全てはこのための目晦まし。
B世界の戦力を分散させるためのカムフラージュ。
NWに在る全ての国々が、人々が、この塔を再建するために力を尽くした。

傷つき、苦しみ、それでも諦めなかったNWは、今まさに、反撃の時を迎えようとしている。




水の塔は元来、宰相府に存在する巨大な塔だ。元々は600mだったか、一度の大工事を経て全長が更に伸びている。その全長は地上から人の目では頂点を目視できず、まるで天に吸い込まれているように見えるほどだった。

水の塔>
・http://cwtg.jp/hankoku/saishofu/tower/index.html
・http://cwtg.jp/hankoku/saishofu/tower2/index.htm#top

今回ダミーも含め再建造された水の塔も同様のものとなっている。この高さが必要なのは、主にWTGを観測するために必要と言われている。

では改めて振り返って、水の塔とは何か。
ここでは以下のように言われている。

・WTG観測用の塔で、WTGの下に立っている
・死亡情報(死んだリューン)が、死者の国にいくためのWTGである

この死亡情報は、世界を巡るうちにどこかで誕生情報に変化する。
だから水の塔は死者を送り出す塔であると同時に、送られた先の他の世界の誕生を司る塔であり、いつか戻ってきて生まれ変わる転生を意味する塔である。

しかしこの塔が、生者の戦争に巻きこまれ、破壊されてしまった。
そこで今回の水の塔の再生にあたっては、生者の戦争によってこれ以上、死者の安息が妨げられることのないようにする工夫がなされた(この項目については【対策】項にて後述する)。

背景からわかるように、塔には誰もが登る必要は、ない。
もとより死者を悼み、彼ら死者の国へと誘う塔であり、同時にまたあおうねと転生を祈る塔である。
NWでは酷い戦いが何度かあり、綺麗な歌声と共に水の塔の名前が挙がることも何度かあったが、本来であれば何度も名前が挙がるような施設ではない。

では元々であれば誰が塔に登っていたか。
この点を振り返ると、一つの事がわかった。

・シオネアラダは、水の塔に昇って、リューンを導くことがある

他の世界に死の情報を流さないと問題が起こる。これは水の塔が死者を送り出すと同時に、他世界の生まれも司るためだ。そこで万物の調停者であるシオネアラダが当てはまることになる。実際に青が頭領になって水の塔に昇ることも、ある方面で言及されている。

この背景をうけて、今後、塔にはシオネアラダ以外の者は踏み込まないことが決められた。

そして塔が、復活した。

塔に入ることへの取り決めはコゼットの歌と共に再建された塔自身にも受け継がれた。塔は今代のシオネアラダを見分け、その者以外は立ち入れなくなったのである。






塔の守りについては以下のように計画され、一部は塔の再建と同時に実行される運びとなった。

・シオネアラダ以外は入れないようにロックをかける(塔にすでに組み込まれている)
・FEGのダミー塔(FEGの砂漠には、太陽電池塔など他の塔が立っているため、これらで紛らわしくする)
・不審なI=Dや飛行体などを察知・警報を出すレーダー網を充実させる(これらはもちろんコゼットの歌で呼ばれるものではなく、普通に作るものである)

それでもなおシオネアラダ以外が無理に入ろうとした場合は以下の機能が実行される。

・NWCへ警報を発する
・同時に、入り口は奥まで瓦礫で埋まり、瓦礫をとりのぞけば、さらなる瓦礫が上から落ちてくる(侵入者による塔の制圧の時間稼ぎ)
・侵入者対応としての歩兵の派遣

そして今後は水の塔を、ひいては死者の魂を守るために【守備隊】を結成することが決まった。

守備隊は水の塔に変事あればすぐさまかけつけ、侵入者に対応することになる。

死者の安らかな眠りと旅立ちを守るために―――。



 

L:グレートヒール = {
t:名称 = グレートヒール(イベント)
t:要点 = 綺麗な歌声,死者を悼む,またあおうね
t:周辺環境 = 折れた塔の国FEG
t:評価 = なし
t:特殊 = {
*グレートヒールのイベントカテゴリ = ,,世界イベント。
*グレートヒールの位置づけ = ,,{特殊イベント,自動イベント}。
*グレートヒールの内容 = ,,歌から死者の国が生まれ、水の塔が再起動する。

t:→次のアイドレス = 野辺の歌(イベント),誕生の歌(イベント),歌姫の病(強制イベント),精霊の降る日(イベント)

イラスト:矢神サク@鍋の国さん、 むつき・萩野・ドラケン@レンジャー連邦さん、時野あやの@涼州藩国さん、ぱんくす@羅幻王国さん、優羽カヲリ@世界忍者国さん、来須・A・鷹臣@るしにゃん王国さん
設定文: 海法 紀光@海法よけ藩国さん、黒霧@土場藩国さん、深夜@後ほねっこ男爵領さん
その他:アポロ・M・シバムラ@玄霧藩国さん(アイコン)、矢上ミサ@鍋の国(HTML)